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2019-02-25

画家、北アルプスの秘湯、湯俣温泉に遊ぶ

2005年8月の夜、北アルプスの名峰、鹿島槍ケ岳へ登るつもりで、静岡から、北へ向かって車を走らせた。

登山口まで夜通し走り続けて、日の出と共に登山を開始する予定だった。

ところが夜明けを迎えても、東の空が明るくなるどころか雲行きがだんだん怪しくなってきた。

「やめた!やめた!やぁ~めたっ!」

軟弱なオレは、少々雨がパラつきそうになるだけで、あっさり

登山✖→温泉◎

…と、予定を変更するのだ。

ここまで来たんだから、どうせなら滅多に行けない秘湯へ・・・

というわけで、北アルプスの山々に囲まれたところにある湯俣温泉へ行くことにした。

ここが気に入ったのは、絶対に車では行けないというところ。

つまり、5時間歩かなければ辿り着けないという、そのロケーションである(たとえ途中までタクシーを使ったとしても3時間以上かかる)。

これぞ、まさしく秘湯、野湯の名にふさわしいではないか。

それにもうひとつ、手掘りの温泉が楽しめるところも気に入った。

オレは、山仲間のKと2人で、その湯俣温泉に向かってタラタラ歩き始めた。

もちろん洗面器にタオルと石鹸ぶらさげて・・・ではない。

「温泉」といっても山道を歩くのだし、テントで泊まるのだから、基本装備は登山の重い荷物そのままだ。

カッコは登山と何ら変わりないのに、どうにも身体の方が「ヘナヘ~ナ」状態。

登山!!となると身も心もシャキッ!とするのに、

おんせ~~ん♪♪、と思うだけで、とたんに心がトロけちゃって、

身体がヘナヘ~ナのふにゃふにゃ状態になっちゃうのは、いったいナゼ?

ふもとの七倉温泉から、トンネルをいくつもくぐり、ダム湖を横目に山道を延々と歩くこと5時間あまり・・・
最後に渓流の吊橋を渡って、オレたちはようやく山間の秘湯、湯俣温泉に辿りついた。

まずはテントを張って、これから先3日間の宿を確保。

あらためて周囲を見回してみると、山!山!山!・・・
かなたにゃ、うっすらと槍ヶ岳も見える。

思わず「気持ちいぃ~い!!」と叫び出したい気分だ。

ところでテントの横にゃあ、あやしげな乳白色の溜め池が。

もしや?と思って指先をつけてみると、なま温かいではないか。

正真正銘まぎれもない温泉だ!

もちろんオレは、日が落ちたら真っ先に産まれたままの状態になって

しゅわっち!

と、その水溜りに飛び込んだが、いかんせんこれは失敗だった。

昼間見ただけでは、表面が乳白色でわからなかったが、実際に身体を沈めてみると底にはなんと、無数の藻(も)がウヨウヨわさわさ…

あわわ~!

いくら「野趣あふれる温泉」といっても、これじゃあねぇ・・・

翌朝オレたちは、気を取り直して、いよいよ本命の“手堀りの湯”へと向かった。

ここへ行くには、テント場からさらに十分ほど奥へ、吊橋をわたり崖をロープで下らなければならない。

やはり、ちょっくらタオル片手に…というわけには行かないのだ。

目的の場所へ辿り着いてみると、ゴーゴーと凄まじい勢いで流れる渓流の周辺にイオウ臭がぷんぷん漂っていた。

両側は鋭く切り立った岩壁。
もちろん人っ子ひとりいない。

脱衣所どころか、建物も看板すらも、とにかく何も無し。

まさに深山幽谷、野性味あふれる野天風呂とはこのことだ。

オレたちもさっそく野生に回帰!
生まれたままのフリチン素っ裸で、渓流の脇をセッセと掘って即席の湯船を作り、

ざぶん!

と、身を沈めた。

「うぉっ!熱ぃ熱ぃちぃ~!」
あまりの源泉の熱さに身体がブッとんだ!


こりゃイカん。
渓流の冷水を引き込まねば…

ところがこの温度調節というのが意外と難しい。


源泉と渓流のちょうど混じり合うところに身をうずめたが…

少し右へ寄ると 「うぉっ!熱ぃ熱ぃちぃ~!」


今度は左へ寄ると 「ひぇっ!冷てぇ冷てぇえっ~!」


また右へ寄ると 「うぉっ!熱ぃ熱ぃちぃ~!」


すかさず左へ寄ると 「ひぇっ!冷てぇ冷てぇえっ~!」

ず~~~っと、このくり返し。

残念ながら、「優雅に山間のいで湯を楽しむ…」という絵図には、ならなかったのである。

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