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2019-04-14

妙高山登山、画家が燕温泉の誘惑に負けて途中リタイア

とっても魅力的な二つの温泉

妙高山の登山口のひとつ、燕温泉には、実に魅力的な野天風呂が二つある。

黄金の湯と河原の湯だ。


黄金の湯は、燕温泉の温泉街を抜けたあたり、登山者カードを入れるポストのすぐ上あたりにあり、

河原の湯の方は、そこからさらに登山道を10分ほど歩いた吊橋のたもとを、少し下ったところにある。

どちらも木々に囲まれた中、簡素な木造の脱衣所がある他は一切何もなく、

岩づくりの湯船に白濁した温泉が贅沢にもジャブジャブ掛け流しになっている。

黄金の湯の方は一応男女別に分かれているが、河原の湯は混浴で、

湯船の真下をゴーゴーと沢の水が音をたてて流れており、

まさに 「野性味あふれる大自然の中の露天風呂」 と、いった感である。

おまけにどちらも管理人などいなく、いつでも入りたい放題の24Hオールフリー(無料)。

…ときたら、ビンボー人のオレは、

「もうたまんなぃ!」

と、思わず身をよじりたくなるのだ。

オレは、妙高山登山の最大の難所は、

実は、頂上付近の険しいクサリ場でもなければ8時間を越えるその長い行程でもなく、

まさしくこの二つの野天風呂である、と踏んだ。

つまり妙高山登山が成功するか否かの最大のカギは、

登山道のすぐ脇で、イオウの香りをぷんぷん漂わせながら登山者に

「おいで、おいで~♡」

をしている、温泉の甘い誘惑に勝てるかどうかにかかっている…ということなのだ。



妙高山アタック

結論から言うと、オレの妙高山アタック一回目は、見事失敗に終わった。

温泉の誘惑に負けてしまったのである。





すべり出しは快調だった。

早朝6時に登山口を出発し、黄金の湯の誘惑も、河原の湯の誘惑も無事やりすごし、麻平の分岐点から燕新道へと道をとった。

ところが、ここらあたりからだんだんと雲行きがあやしくなり、

沢を越えたあとの急登を喘ぎながら登っている頃には、ショボショボと小雨が降り出した。


そのときだ。

オレの背中から、あの悪魔のささやき声が聞こえてきたのだ。

「登山なんか止めちゃいなよ~温泉の方が気持ちいいよ~♡」

さっき振り切ったはずの温泉の甘い誘惑が、ここまで追いかけて来たことにオレは驚いた。

「登山なんか止めちゃいなよ~、雨の中の登山なんかつまんないよ~♡」

いやいやお前たちの甘い誘い文句にゃあ負けるもんか!

オレは登山をするためにここに来たのだ!

「登山なんか止めちゃいなよ~温泉の方が気持ちいいよ~♡」

ムムムッ、お前たちの甘い誘い文句にゃあ…

う~ん、でも、やっぱこういう天気の時にゃあ、登山より温泉の方がいいかも…



オレの思考回路は次第に

「登山×→温泉〇」

となっていった。

温泉の誘惑に負ける

それからわずか30分後のことだ。

そこには、登山靴を脱いで、河原の湯の白濁した湯に身をうずめ、

「ふぅ~やっぱ温泉ってサイコー♡」

と、感嘆の声をもらすオレの姿があった。

妙高山アタック二回目

翌年のことである。

この失敗を二度と繰り返すまいと、妙高山アタック二回目は用意周到に準備をととのえた。

前日に早々と燕温泉入りしたオレは、登山の前に二つの野天風呂にゆっくり時間をかけてつかり、

「もう温泉はこれで十分…」

…と、我がカラダに満足せしめたのである。

翌朝は天気も快晴。

もうすでに十分すぎるほど温泉を堪能したオレは、イオウの甘い香りに振り向くこともなく、無事に妙高山の山頂を極めることができたのである。


妙高山登山の思い出を、こんな絵に描いてみました。

河原の湯の誘惑(部分)
黄金の湯の誘惑(部分)

→ 奥村ユズルの作品はコチラ

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