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2018-11-18

大峰山登山、山上ケ岳の西の覗きで画家が恐怖の修行体験をする

修験道の山

大峰山は、修験道の山として名高い。

平安時代のスーパーヒーロー役行者(えんのぎょうじゃ)によって開山され、主脈を、吉野から熊野本宮大社まで100キロ以上にわたって大峰奥駆道(おくがけみち)という険しい山岳修行の道が貫いている。

この大峰奥駆道は世界遺産にも登録されていて、途中には七十五靡(なびき)と称する75の行場、すなわち修行の場があるらしい。

どうやら大峰山を登ることは、単なる登山というより、山岳修行に足を踏み入れることみたいだ。

ツマミ食い登山?

どうせ大峰山に登るなら、この大峰奥駆道を全山縦走し、75の修行を完遂して、修験道のパワーを身につけたいところだ。

ところが、しがないサラリーマンのオレにはなにぶん時間がないので(実は根性の方がない?)、縦走はあきらめて、ところどころをツマミ食いのようにして登ることにした。

まず、最初の年に行者還トンネルから弥山を経由して主峰である八経ヶ岳を往復した。

次の年に、山岳修行のメッカ、山上ヶ岳を洞川(どろかわ)から往復し、最後に吉野を奥千本まで散策した。

中でもハイライトは、やはり修験道の根本道場として名高く、大峰山寺(世界遺産)を山頂に抱く山上ヶ岳だ。

百名山ゲッターは、山脈の最高峰である八経ヶ岳を登ることによって、

「大峰山ゲット~!」

とカウントする人が多いのかも知れない。

でも、オレには、

「やっぱ大峰山は、この山上ヶ岳を登らなけりゃぁねぇ~」

、、、という気がするのだ。

いざ山上ケ岳へ!

5月の連休のある日、オレは麓の洞川温泉の駐車場で車中泊し、未明よりこの山上ヶ岳へ向けて登り始めた。

洞川温泉街の町並みを抜けてしばらく歩き、清浄大橋を渡ると「女人結界門」と言うのがあった。

ここから先は、女性は一切立ち入ることができないらしい。

実は、山上ヶ岳は、現代の世にまで「女人禁制」を頑(かたく)なに死守している全国でも珍しい山なのだ。

たしかに、この山には、女性登山者はもちろんのこと、カラフルなスカートをまとった“山ガール”の姿なぞ、どこを見渡してもいない。

…っていうか、むしろ似つかわしくない。

正真正銘、頑固一徹、真実一路、灘の生一本?

まさにここは、“修行の山”なのである。

でも、「フェミニズム」やら「男女共同参画」やらが、これだけ声高に叫ばれている今の時代に、あけすけに

「女性は入れないもんネェ~」

、、、などとやっていて、ホントに大丈夫なんだろうか?と心配になる。

歩き始めること3時間。

頂上が近くなった頃に、行場と呼ばれる修行の場所が現れ始めた。

油こぼし、鐘掛岩…どちらも険しい岩場だったが、なんとか乗り越えた。

そしてついに真打ち登場!

「西の覗き」と書かれた看板を発見した。

「西の覗き」でキョーフの修業体験!

「西の覗き」と言えば、テレビなどで時々映し出される、あの断崖絶壁から身を乗り出す有名な荒行だ。

オレは興味本位で、フラフラとその断崖絶壁とやらを見に出かけた。

もちろんフラリと立ち寄った登山者に修行が出来るはずが無いと思っていたし、そもそも崖から身を乗り出すなんてコトはまっぴら御免だ。

ただ、大峰山に登った話のタネに「西の覗き」とやらを見ておこう、と思っただけだ。

樹林帯が途切れた所に大きな岩場があった。

霧が出ていてよく見えないが、その先は切り立った崖になっているようだ。

あたりには人影もなく、ビュービューうなる風の音以外は、不気味なほどの静寂が漂っていた。

、、、とその時、どこからか人の話し声が聞こえた。

辺りを見回してみると、すぐ脇に岩の祠(ほこら)のような管理室(…っていうか掘っ立て小屋)があった。

どうやら扉の向こうに人がいるみたいだ。

次の瞬間、オレは自分でもびっくりするような思いがけないことを口走っていた。

「すいませ~ん、西の覗きっていうのは、やらせてもらえるんですか~?」

(オメェ、軽々しくなんてことを言い出すんだ!)

もう一人の自分が必死に止めにかかったが、すでに時は遅かった。

「はいはい、どうぞ・・・」

いとも簡単に承諾する返事が聞こえた。

(オイオイ、「登山者の興味本位の修行は受付けません!」っとか、断ってくれないかなぁ、、、)

扉が開くと、野球帽をかぶった二人の爺さんが出てきた。

「今から農作業に行ってくんべぇ~」というようなごくフツーの格好だ。

「はい、じゃあ両腕にこのロープを通してね、、、」

オレは、まるでリュックを背負うような形で、先が二つの輪になったロープを両腕に通された。

(あれっ?確かテレビだと、屈強な山伏姿の大男たちがロープを支えてたよね、、、)

「はいはい、じゃあ、崖の先まで行ってネ」

(屈強な山伏が今から来るんだよね、、、)

「はい、じゃあそこに這いつくばって」

(えっ、まさかこの二人のちっちゃな爺さんがロープを支えるんじゃあないよね、、、)

「もうちょっと前に出てネ」

(くくっ屈強な山伏はどこ?、、、)

次の瞬間、今までやさしかった爺さんの声音が急に変わった。

「もっと前に出んかい!」

「ハハっ、ハイ!」

オレは必死になって崖の先端から身を乗り出した。

「もっと前じゃい!」

崖の下は霧でかすんでいるが、かなりの高さだ。

「ボージーソワカ、ハンニャラホンニャラ・・・」

爺さんは何やら呪文らしきものを唱え始めた。

「両親を大切にするかっ?」

「ハイ!」

「奥さん、子供を大切にするかっ?」

「ハイ!」

「浮気はしないかっ?」

「ハイ!」

その先は、うなりをあげる風の音にかき消されてはっきりと聞き取れなかったが、オレはとにかく必死の形相で「ハイ!」を繰り返した。

そして、ようやくこの修羅場から開放されるかと思った瞬間のことだ。

ロープを持つ手が緩められ、ズルリと身体が崖下へ向かって数十センチほどずり落ちた。

「アブナ、アブナ、あぶない!おっ怖っ~」

オレは情けないほどの悲鳴をあげてしまった。

そして引き上げられた時、オレには、オレの命の手綱を握っている、このちっちゃな二人の爺さんが、とっても神々しく見えたよ。

↑西の覗きの断崖絶壁から下を覗いたところ。右下に写っているのは自分の靴。

↑ちなみに西の覗き修行体験は有料(いくらか忘れた)。記念に朱印の書かれた鉢巻きが貰える。

大峰山の修行の思い出を、こんな絵に描いてみた。

テレビだと白装束の屈強な山伏が支えているのに、、、
こんな感じで崖から乗り出す
こちらは女人結界門
1300年の歴史がある有名な胃腸薬、陀羅尼助丸

→ 奥村ユズルの作品はコチラから

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