画家、ボルネオ島へ行く(3)ブルネイの水上集落カンポンアイール
ブルネイを知ったキッカケ
オレは、コタキナバルから海路でブルネイに入国した。
ブルネイ王国というのは、東南アジア諸国の中でも、もっとも日本人に馴染みの薄い国だ。
だが、そんなブルネイが30年ほど前に、マスコミをちょっとばかり賑わしたことがあった。
当時人気のあったAV女優、村上麗奈が、なんと、来日したブルネイの皇太子の夜の接待をした、というのだ。
その頃のオレは、村上麗奈にはずいぶんお世話になっていた(なんのこっちゃ!)ので、このニュースには心底驚いたよ。
だが、コレがきっかけとなって、アジアにブルネイという国があることを、オレは初めて認識したように思う。
ところでこちらが、オレが滞在先に選んだ宿。
一泊約4000円(素泊まり)と物価が高いブルネイではかなり安い方である。
ブルネイ名物の水上集落へ行く
翌日は、オレがブルネイ王国でいちばん行ってみたかった場所、水上集落を訪ねた。
川岸に停泊しているボートのオッチャンに1ブルネイドル(約90円)を支払うと、ボートはいきなり対岸に浮かぶ水上集落めがけて猛スピードで走り出した。
こちらは振り落とされまいと必死であった。
その間、わずか数十秒。
あっけなくボートは水上集落に到着した。
ブルネイの水上集落、カンポンアイールは、ブルネイ川(川と言っても湖のように広い)の水上に浮かぶように築かれ、建物はすべて水中に打たれた支柱の上に建っている。
ウィキペディアによると「人口は3万9千人ほどで世界最大の水上集落となっており、42の村が存在している」そうだ。
水上集落には民家だけでなく、学校や警察、さまざまな商店、ガソリンスタンド(もちろんボート用)、モスク、病院など、ひととおりのインフラが整っていて、その気になればここだけで一生を過ごせそうだ。
こうした建物のすべてが、人がかろうじてすれちがうことの出来る幅の狭い歩道で結ばれている。
歩道もすべてが、水中に打たれた杭の上に作られ、中にはコンクリートの頑丈な物もあるが、多くは木材の板を継ぎ合わせただけの粗末なシロモノで、もちろん欄干や手摺なんてものは無い。
つまりは、ちょっとよろけるとそのまま川にドブン!というわけだ。
しかもこの川には、なんとワニまで居ると言うではないか!
げんに、夜、酔っ払ってフラフラと歩いていた住人がドブン!と川に落ちて、そのままワニの夕食になってしまったコトもあるとか、、、
オレは、川に落ちてワニの餌にならないように、慎重に水上集落を散策した。
水上集落ではもう一つ注意する事がある。
まるで迷路のように歩道や民家がフクザツに入り組んでいるので、気をつけていないとすぐ迷子になってしまうことだ。
もっとも道が分からなくなってしまっても、時おり眼下の水上を走り抜けるボート(つまりタクシー)を止めて乗り込みさえすれば何とかなるが。
民家の多くは板とトタンを組み合わせた粗末なものが多い。
軒先には洗濯物がぶら下がり、テレビの音が漏れ聞こえる。
小学生の集団が先生に引率されて歩いていた。
水上の小さなモスクからはアザーン(イスラム教の祈り)が流れている。
水上集落の散歩は、人々の暮らしぶりが垣間見えて、ホントに楽しかった。