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2019-08-03

画家、ボルネオ島へ行く(6)帰りのフライトでの出来事

コタキナバルを後にする

ブルネイの水上集落、ブルネイからコタキナバルへと8時間かけて国境を超えて移動する「スタンプラリーのバス旅」、サピ島の青い海と大トカゲ…

さまざまな思い出を残してオレのボルネオ島旅行は終わろうとしていた。

オレは中国の広州経由で日本に帰るべく、19時半のフライト(中国南方航空)でコタキナバルの空港から飛び立った。

広州には23時ごろ到着する予定だ。

乗り継ぎ便の羽田行きのフライトは翌朝9時発なので、当初からオレは空港で野宿するつもりで寝袋を用意して来ていた。

もちろんビンボー人のオレにとって、乗り継ぎだけのために空港近くの高価なホテルで泊まるなんてコトは、もってのほか、絶対にあり得ない。

オレにとっての空港ホテルとは、空港のベンチの上で寝ることなのだ。

(実際オレはこれまでにも、ニューヨーク、ロスアンゼルス、北京、クアラルンプール、バンコク、ニューデリー、モスクワ、カイロ、ドバイ…世界各地の空港で、ベンチや床をホテル代わりにしてきた)

…というわけで、この夜も空港内を、

「どのベンチが寝心地良さそうかな?」

と、さりげなくチラ見しつつトランスファー(乗り継ぎ)カウンターへ向かった。

広州空港での出来事

ところがカウンターに着いてみると中国南方航空の職員が、

「宿泊所を用意するからついて来い」

…というではないか。

?????

そんなコト何も聞いてないぞ。

宿泊所っていったい何のコトだ?

空港の中に簡易ベッドでもあるというのか?

それとも空港ホテルか?

それはタダなのか?

それともカネを払えというのか?

オレのアタマの中はとたんに???でいっぱいになった。

職員の後をついて行くと、別の専用カウンターのような所へ通された。

今度は、カウンターのお姉さんが、高級そうなホテルの写真がズラリと6つほど並んだカタログをオレの前に広げて、「どれでもイイから選べ」 という。

「ハ、ハ、ハウマッチ?」

オレがおそるおそるたずねると、なんと

「フリー(無料)だ!」

と、いうではないか。

オレの指は、フリーという単語を聞いた瞬間、反射的に一番高級そうなホテルを指差していた。

写真でみる限り広州でも指折りのラグジュアリーなホテルであることは間違いない。

オレは心の中でこう叫んでいた。

「ラッキー! フリー大好き❤ 中国南方航空大好き❤」

「空港の硬いベンチで寝る予定が、思いがけずラグジュアリーなホテルにタダで泊まれるなんて…やっぱ人生捨てたもんじゃないね…」

ラグジュアリーなホテルの正体は?

待つこと約30分。

さらに専用バスに乗せられ市中を30分。

バスは、あたりにまったく人気(ひとけ)のない真っ暗な敷地の前でスピードを緩めたかと思いきや、薄暗い大きな建物の玄関先でピタリと止まった。

運転手が、ここで降りろ!という。

ムムムっ? ここはいったい何処だ?

コレがあのラグジュアリーなホテルか?

写真と大分違うぞ!

それに一階のフロント以外はどこも電気が消えて真っ暗じゃあないか!

おそるおそる中に入ってみると、たしかにホテルであることには間違いない。

それにしても、この暗さはなんだ?

この閑散とした雰囲気はなんだ?

フロントに近づいてみると、カウンターには「中国南方航空の乗客オンリー」の文字が。

それを見てオレはすべてを理解した。

ここは、もとラグジュアリーだったけど今は倒産してしまったホテルなのだ。

その倒産してしまったホテルの一部だけを中国南方航空が借り受けて、最低限のコストでトランスファー客に一夜の宿を提供する施設として利用しているのに違いない。

その証拠に、建物の外観だけは立派なホテルだが、一部を除いて灯りがついてなくて真っ暗だし、人の気配もほとんど無いじゃないか。

オレは、まるでユーレイの出そうな薄暗い廊下を渡り、指定された部屋に向かった。

とりあえずベッドに横になった時には、すでに時刻は深夜1時をまわっていた。

明日は5時に、モーニングコールで叩き起こす!とのこと。

ええっ!たったの4時間しか寝られないじゃないか!

それにこんなお化け屋敷のようなホテルでか?

ゲゲッ!こんなことなら空港のベンチの方がよっぽど良かった・・・

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