オーストラリア画家修行の旅
オーストラリアでバスキングに挑戦しよう!と突然思い立った。
バスキングとは、路上で音楽を奏でたり、絵を描いたり、さまざまな芸を披露したりする、すなわち大道芸をすることだ。
人前で絵を描いたことがほとんどない、このオレが、はたして人々が行き交う繁華街の路上で、マトモに絵を描くことができるのか?
そんな自分自身への挑戦もあって、とにかくやってみることに決めた。
いったん決めたら話しは早い。
メルボルン行のチケットを予約して、仕事の方は有給休暇をとって自分が居なくても何とかなる状態にした。
次に、メルボルン当局へバスキング説明会の申込をした。
街頭でバスキングをするには、メルボルン市当局から許可証を手に入れなければならないが、そのための説明会は、一カ月に2回程度しか開催されないのだ。
もちろん、航空券もその説明会にタイミングを合わせて購入した。
そんなこんなで準備を万端に整えて、オレは、いつもと違った大荷物(いつもはデイパック一個だけなのだ)を抱えて、羽田空港へと向かった。
大荷物とは、画材や作品がいっぱい詰まった大きなスーツケースに、20号カンバス三枚。
これで駅まで歩いたり、電車に乗ったりするのは実に難儀だった。
オレは、6月のある日、広州経由の長いフライトで朝8時にメルボルンに降り立った。
日本は初夏の陽気だったが、こちらは落ち葉が路に舞い、まるで季節が逆戻りしたような不思議な感覚にとらわれた。
とりあえず空港からバスで市中に出て、駅から重いスーツケースとカンバス担いで、トコトコ40分ほど歩いて、本日から泊まる予定のホテルに到着した。
ところが、ホテルの扉は、鍵がかかって誰も応答しない。
アーリーチェックイン(早めのチェックイン)をリクエストしたのに、メールは届いていなかったのか?
ここは一階が酒場になっているメルボルンでは老舗の宿。
張り紙を見る限り酒場の支度が始まる午後3時にならないと誰も来ないようだ。
15分ほど待ったが諦めた。
このままでは、14時から始まるバスキング説明会に間に合わない。
かといって、荷物を置き去りにするわけにもいかず、仕方なくオレは、ふたたび重い荷物を持ったまま40分かけて街中へ戻ることに。
トホホ…
バスキングの説明会に参加する
14時、メルボルン市庁舎の一室でバスカー(大道芸人)向けの説明会が始まった。
メルボルン市は観光資源として、積極的にこうしたバスカーを受け入れており、1ヶ月に2回だけ開催されるこの説明会に参加することによって、誰でも(すなわちプロ、アマ問わず)バスキング(大道芸)の正式な許可を得ることが出来る。
この許可証さえゲットすれば、基本的に街中どこでも(建物の入り口付近は禁止など、ある程度の制限はあるが)、いつでも(もちろん深夜に大きな音を出してはいけないが)バスキングをすることができるのだ。
今回の説明会の参加者は約40名。
おそらく大部分がミュージシャン系で、オレのように路上で絵を描くタイプは極く少数派(たぶんオレだけ)。
オレの他に二人組の若い日本人青年がいたが、彼らはワーキングホリデーでメルボルンに滞在しながらダンスを習っており、路上でブレイクダンスを披露する予定だとか。同国人に会って、ちょっとホッとした。
説明会そのものは、オレの英会話能力では、チンプンカンプン。
でも、あらかじめパンフやネットで情報を得ていたので、まぁ何とかなるか、、、
こうして一時間ほどの説明を聞いて、めでたく許可証をゲットしたのであった。
さあ、やるぞ!