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2018-02-25

インド旅行記(3)リシケシへの道は限りなく遠し?

インド世界は、オレの固い意志やら計画やら予定やらを、いとも簡単に打ち砕いた。

 

まさか自分が旅する先に、洪水が待っていようとは、思いも寄らなかった。

 

結局、オレは昨日のうちにリシケシまでたどり着くことが出来ず、手前のハルドワールの街で一泊した。

 

おまけに、雨具を持参しなかったために、全身ずぶ濡れになり、何とか一夜の宿を確保することができたものの、風邪をひいてしまった。

(これがハルドワールでの夕食)

 

(ホテルでお絵描き) 

 

翌日、ハルドワールのバスターミナルへ向かった

 

「今日こそリベンジだ。何としてもリシケシまで行ってやる…」

 

ガイドブックによると、リシケシ行きのローカルバスは「1時間おきに頻発」と書いてある。

今度こそ楽勝に思えた。

(まずは屋台で腹ごしらえ) 

 

とりあえず切符を買おうと、チケット窓口に向かった。

 

窓口で、いかにもやる気のなさそうに座っているオヤジに向かって、オレは言った。

 

「リシケシまで大人一枚!」

 

するとオヤジは、面倒くさそうにただ一言

 

No bus!

 

「え????」

 

オレはもう一度聞く。

 

「リシケシまで行きたいんだけど…」

 

「ノーバス!」

 

そのままオヤジはそっぽを向いてしまった。

 

「なっなっ何んで、ノーバスよ?」

 

食い下がるオレに対して、オヤジはまったく取り付く島がない。

 

「ノーバスっていったいどう言うこと???」

 

オレは頭が真っ白になった。

 

思い直して、オレは、そこらにいるバスの運ちゃんやら乗客に手当たり次第に聞いて回ることにした。

 

しかし、ここはインドだ。

 

みんなそれぞれが「あっちだ!」と自信たっぷりに答える。

 

指差す方向へ行ってみると、そこでは「ここは違う、あっちだ!」とまた別の方角を指差す。

 

いったい何度これを繰り返したのだろう?

 

これは、もしかして、聞く相手が根本的に間違っているのかも知れない。

 

オレは、いったん自らの心を落ち着けて、周りのニンゲンをじっくり観察し、出来るだけ信用できそうな人相を探した。

 

すると、大学生らしき青年たちが数名輪になってたむろしているのが見えた。

 

おっ!これだ。

 

学問を追及する学生たちなら、互いに知恵を絞り合い、異国で窮している哀れな異邦人を救おうと、真摯に対応してくれるに違いない

 

そう確信したオレは、学生たちに歩み寄り、いかにも困った様子でリシケシ行きのバスを尋ねた。

 

青年たちはしばらく相談し合った後に、爽やかな笑顔で

 

「あのバスだ!」

 

と、真新しい白いバスを指差した。

 

これぞ天の助け!

 

オレは、他の濡れ雑巾のように汚れたバスの中にあって、一台だけひときわ輝きを放っている白いバスへと、一目散に駆けていった。

 

「これはリシケシ行きのバスか?

 

「違う、デリー行きだ!」

 

「???」

 

ここでオレの思考回路は完全にプッツンしてしまった。

 

途方に暮れる、とはこういうことだろう。

 

薄暗いターミナルの床に、足の踏み場もないくらいにぎっしり座ったり横たわっている人々、

バスの周辺に群がる人々、

こうした全てのインド人たちがまるで共謀してオレを陥れようとしているかのごとく思えてきた。

 

オレはなす術もなく群衆の中に立ち尽くした。

 

 

「誰かオレをリシケシへ連れて行ってくれい~(泣)」

 

そんなオレの心の叫びを聞いたのか、一台のオートリキシャ(三輪タクシー)が声をかけてきた。

 

もう値段なんかどうでもいい。

 

とにかくリシケシに行けさえすれば、、、
 

「リシケシまで行きたいんだが、、、」

 

「乗りな!」

と、一言。

 

ありがたい!

 

かなりオンボロなリキシャだが、そんなのどうでもいい。

 

こうしてオレは、ようやくリシケシに向かって走り出したのである。

 

(オンボロオートリキシャの客席から。向かいのは雨除けのビニールに覆われているので、オレのに比べてかなりいいリキシャだ)

 

しかし、このリキシャは、かなり年代モノだ。

 

最初こそ快調に飛ばしていたが、街中を離れ、山道になったとたんに、まるで喘ぐように坂を登り始めた。

 

ブルブルン、ブルブルン、ブル、ブル、ブル、、、

 

だんだんエンジン音が怪しくなってきた。

 

ブル、ブル、ブル、ブル、ブ、ブ、ブ、ブ、、、ブ。

 

「あれあれ、大丈夫かよ?」

 

ブブブ、ブ、ブ。。。

 

リキシャは、ついに坂の途中で止まってしまった。

 

「オイオイ、まじかよ?

こんな山の中で。

しかも外は雨が降ってるし」

 

運転手の兄ちゃんは、車を離れると、近くにあった大きな水溜まりに駆け寄った。

 

「いったい何すんの?」

 

すると兄ちゃんは水溜まりの泥水を両手ですくって、器用に車のところまで運び、エンジンにせっせとかけ始めた。

 

これを何度か繰り返しているうちに、かろうじてエンジンがかかった。 

 

(運転席の下にリキシャのエンジンがある。兄ちゃんは泥水をすくいに行った)

 

リキシャは、喘ぎつつも走りを再開し、雨の山中での立ち往生だけは回避したように見えた。

 

しかし、山中を抜けて小さな町にさしかかったところで、またもやエンジンが止まってしまった。

 

兄ちゃん、今度は車を押しながら、町の小さな修理屋へ駆け込んだ。

 

オレはここでいったん降ろされ、リキシャの修理が終わるのを為すすべもなく見ているしかなかった。

 

「こんなんで、いつリシケシにたどり着けるんだろう、、、」

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