エジプト旅行記(3)ピラミッドでボッタくられる?
エジプト旅行記(2)へ戻る
親切そうな紳士の正体は?
ギザへ向かう満員バスの中で、その男は実にジェントルマンな身のこなしを見せた。
年配の女性を見かけるとさりげなく席を譲り、自分は立ったままで近くにいた初老の男性と何やら余裕タップリな笑顔で歓談・・・
かと思いきや、さりげなくオレの方を振り向き「大丈夫か?」と気づかってくれる。
「う~む、コイツは正真正銘の紳士だ!」
オレは心の中でうなった。
遠く離れた異国の地で、真のジェントルマンに出会えた幸運を天に感謝した。
これが悪夢の始まりだとは、微塵(みじん)も思うことなく・・・
バスはギザの町に到着し、オレはその男に従ってミニバスのタクシーに乗り換えた。
そのタクシーの中で、男は行った。
「遠い日本からやってきたゲストに、私はピラミッドの素晴らしさを存分に味わってもらいたいと思う」
「それにはラクダに乗るのが一番だが、残念ながらこの国には外国人旅行者目当ての悪質な客引きが多い」
「だが私は、政府が運営しているエジプト人向けの旅行社と特別なルートを持っている」
「そこへ行けば、エジプト人価格でラクダに乗ることが可能だよ」
「君との友情のシルシに、その旅行社を紹介しよう」
男はささやくようにオレにすすめた。
ボッタくられたぁ~!
それから約1時間後、オレは砂漠でラクダの背に揺られていた。
彼方には巨大なピラミッドが神秘的な姿でそびえていた。
あの親切な男とは、さっき国営?旅行社の前でラクダに乗る時に別れたばかりだ。
男は旅行社の窓口で、
「この客は日本から来た大切な友人なのだ。特別に安くしてやってほしい。」
とかけあってくれた。
オレは一時間のキャメルライディング(ラクダ乗り)ツアーを申しこみ、料金を支払った。
別れ際に男は、
「この国には悪質な詐欺師が多いから十分注意しなさい・・・」
とオレの旅の安全を祈ってくれた。
オレの方も、男の示してくれた友情に心から感謝し、オレたちは最後に互いに頬にキスをし合った。
オレがようやくボッたくられたことに気づいたのは、男と別れて10ほど経った後、ゆらゆらとラクダの背に揺られている時だった。
さっき旅行社で支払ったエジプト人価格?の300ポンド(約6000円)は、よ~く考えてみるとエジプト人にとっては途方もない大金であることに、ふと気づいたのだ。
ちきしょ~!ダマされたぁぁあ~!
、、、と判っても、もうあとのまつり。
オレはゆらゆらラクダの上、まわりは一面の砂漠。
ムラムラと怒りがこみ上げてきたが、如何ともしがたいではないか、、、
それに何と愚かにも、オレは自分をダマした男とハグを交わした上に、頬にキスまでしてしまったのだ!
うげげぇ~
胸の奥から吐き気を催したのであった。
(おしまい)
コメントを残す