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2018-03-15

アイルランドでホームステイ ケルトの国のハロウィン

 アイルランドでホームステイした思い出

もう、かれこれ30年近く前の話である。
 
まだ若かりし頃、私は、アイルランドの首都ダブリンで、2ヶ月ほど暮らしたことがある。
 
英国で1年間のボランティア活動することに先立ち、ロンドンよりおそらく物価が安いであろう、お隣の国、アイルランドで、英会話を勉強しておこうと考えたのだ。
 
ダブリンでは、滞在費を安くあげることと、「生きた英語」に触れる目的で、一般アイルランド人家庭にホームスティした。
 
 
毎朝、スティ先で家族と共に朝食を済ませた後、路線バスでダブリン中心部へ通った。
 
午前中は語学学校で学び、午後は街中の喫茶店で時間をつぶしたり、美術館や博物館巡りを楽しむ、、、といった、まるで学生時代に逆戻りしたような楽しい毎日だった。
 
残念ながら英語の方はほとんど身につかなかったが、ほんの2ヶ月間とはいえ、生活者の視点でアイルランドという国を垣間見ることが出来たことは大きな収穫だった。
 
 
 

ステイ先の家族のこと

 
スティ先の家族は、ビルとメアリという40代の夫婦に小学生の子が二人。
 
典型的な中流家庭に思われた。
 
 
ビルはフットボールが大好きで、夜はもっぱらテレビでスポーツ観戦、休日ともなると私を伴ってスタジアムへと足を運んだ。
 
日本では、まだJリーグが開幕しておらず、サッカーを見る機会も少なかった時代だ。
 
私はまったくサッカーには興味がなく、テレビを見ながら懸命にフットボール、すなわちサッカーの魅力を実況中継するビルに、適当に相槌を打っていた。
 
一方、妻であるメアリは、話題といえばフットボールばかりの夫に対して不満がくすぶっているようで、
 
「あの人は家庭の事をかえりみず、いつもフットボールのことばかりなのよ!」
 
、陰で私に対して夫の事をなじる始末。
 
2ヶ月の滞在が終わる頃には夫婦仲はもう最悪で、私の目の前ではばかりも無く互いを罵り合うような有り様であった
 
 
 

アイルランドのハロウィンに驚く

 
そんなある週末、私はアイルランドの西の果てにあるアラン島を目指して小旅行に出かけた。
 
(いさか)い事の多くなったスティ先がどうにも居心地悪く、気分転換を計りたくなったのである。
 
ケルト文化が色濃く残るアラン島の訪問記についてはまた別の機会に譲るとして、小旅行を終えてダブリンへ戻ってきた晩はおりしもハロウィンナイトであった。

私を乗せたバスは、ターミナルを目指してダブリンの市中を走っていたが、突然、バスの車窓の向こうに、魔女や白い幽霊、怪異な仮面の悪霊たちが次々と現れたのには心底驚いた。

 

薄闇が迫る中、モンスターたちが群れをつくり、町を闊歩し、いたるところで魔よけの火が焚(た)かれていた。

 

そんな光景を目の当たりにして、一瞬、私は思った。

 

「これは映画の撮影か?それともテロか?」

無理もない。これはハロウィンという言葉さえ、日本人にとって馴染みのなかった30年前のことなのだ。

 

すぐに、私自身がハロウィンの休暇を利用して旅に出ていたことに気がついたが、まるでダブリンの町全体がゴーストたちに占領されてしまったかのような不可思議な光景に、

「これがハロウィンというものなのか、、、」

 

と、心から合点が行く思いだった。

 

ハロウィンはアメリカのお祭りだとばかり思っていたが、ケルト人の収穫祭の風習がハロウィンの起原であることを、その後知った。

 

妖精や、神話や、こうしたゴーストたちが今の時代に息づいている、アイルランドという国が、私はますます好きになった。

こちらは、アイルランドのハロウィンをテーマにした作品です。

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