カナディアンロッキー旅行記 バンジージャンプに挑戦!
男5人のヘンテコ旅
カナダ、と聞いて、皆さんは何をイメージしますか?
針葉樹の森と青く澄んだ湖、そそりたつ白銀の山々…
やはりカナダと言えば、ロッキー山脈でしょう!
「ちっちゃくて狭いニッポンを飛び出して、カナダの大自然を満喫したい!」
こんなリクエストに応えるべく、オレは、障害のある友人二人(脳性マヒのIと進行性筋ジストロフィーのS)、それぞれの介助者を連れて、男ばかり5人でカナダの大地を旅することになった。
「ロッキー山脈の麓をレンタカーでぶっ飛ばし、アルバータ牛のステーキに舌鼓を打とう!」
…という魂胆である。
もちろんホテルは、行き当たりばったり。
北米大陸は、ハイウェイ沿いにモーテル(モーターホテル)が適度に点在しているので、飛び込みでも何とかなる。
それに、このモーテルというやつが、部屋のすぐ横まで車をつけられるし、室内は広くて段差がないので、車イス旅行者には意外と便利なのだ。
いざ、ロッキー山脈へ!
旅のはじまりは、カナダ西海岸の玄関都市バンクーバー。
高層ビルが建ち並ぶ一方で、海と山がすぐ身近にある、とっても魅力的な街である。
バンクーバーのバーで旅の始まりを祝い、ミュージカル鑑賞を楽しんだ後、オレたちはレンタカーを借りて、今回の旅の目的地、ロッキー山脈を目指した。
都会を抜けてしばらく走ると、すでにあたりは山々が織りなす大自然のふところ。
「気持ちいい~~~っ!」
オレは、すっかり調子に乗って、大平原の中の一本道を、
ガー!!!!!
と、かっ飛ばした。
すると、
ピー!!!!!
と、どこからともなく高らかな笛の音が。
なんだ?なんだ?なんだ?なんだ?なんだ?
なんと、それは、 調子に乗ってスピードを出し過ぎる輩(やから)、つまりオレたちのような不届き者を取り締まるカナダ警察だったのだ。
「アイアム、ジャパニーズ…」
「コチラの交通ルール、ワ・カ・リ・マ・セ・ン…」
オレは、
「どうか哀れな外国人旅行者にお情けを(泣)」
と、必死にうったえたが、カナダ警察はまったく容赦してくれず、結局、約1万円のスピード違反の罰則金を支払うハメに。
トホホ… (泣)
バンフの町で温泉につかり、富豪の招待を受ける
オレたちは、なんとか気を取りなおして、ロッキーの麓の町バンフに辿り着いた。
バンフでは、白銀の山々を望む広大な露天風呂を楽しんだ。
水着を着て入るので、風呂というよりは野外の温水プールといったカンジだ。
オレたちが、浮き輪に乗せたIやSを囲んで
キャッ!キャッ!
と、はしゃいでいると、それを珍しいと思ったのか、品の良さそうな白人夫婦が声をかけて来た。
彼らはなんと、ロスアンゼルスからバカンスを過ごすために、はるばるバンフまでやって来たアメリカ人の社長夫妻であった。
「キミたちをぜひディナーに招待したいから、今晩私たちのホテルへ来てほしい…」
ラッキー!!!
オレたちは、社長夫妻が滞在している豪華なホテルのレストランに招待され、思いもかけず、ふだん滅多に食べないご馳走にありつくことができたのであった。
バンクーバー島でバンジージャンプに挑戦!
ロッキーの大自然を満喫した後、オレたちは、バンクーバー島へと渡り、なんとバンジージャンプに挑戦することにした。
バンクーバー島のナナイモにあるバンジージャンプは、42メートルの橋の上から、眼下の渓流めがけてまっさかさまにダイブすることで有名だ。
筋ジストロフィーの障害者Sだけは、
「さすがに命の保障はない…」
…ということであきらめ、脳性マヒのIと他のメンバー計4人がチャレンジすることに。
受付の門をくぐると、カウンター横のディスプレイには、車椅子に乗ったままの状態でダイブする命知らずの障害者のビデオなどが繰り返し映し出されていた。
さすがカナダ!障害者のスケールも違うぜ!
オレたちは、ひとり約1万円の参加料を支払い、順番に誓約書にサインをした。
心なしかペンを握る手が震える。
その誓約書には、
「万が一事故があっても、決められた保険の範囲内の金額しか請求しません…」
…ってなコトが書かれていた。
順番を待っている間、オレたちは、次々とトイレへ駆け込んだ。
「ジャンプした途端に、あまりの恐怖に身体の中のブツが全部出てしまったら、あまりにみっともなくて、今後の人生に影響する…」
と、考えたら、急に「もよおし」たのだ。
そして、いよいよ自分たちの番がやってきた。
オレたちは、まるで断頭台に登るような気分で、渓流に架かる橋へと続く階段を一歩一歩上がった。
橋の底板の隙間からは、はるか下の渓流に浮かぶゴムボート(ジャンパーを回収するためのもの)がゴマ粒のように小さく見えた。
それもそのはず、地上42メートルは、ビルで言えば12階ぐらいの高さになるのだ。
まずトップをきったのはオレ。
ココは躊躇しては負けと、何も考えず覚悟を決めて 「エイヤッ!」 と、飛び降りた。
仲間たちが次々と飛ぶ中、いよいよ最後はI(脳性マヒ)の番だ。
実はこのIは、かつては富士登山にも挑戦し、見事に車椅子で日本の頂上まで上り詰めた命知らずのチャレンジャー。
彼は、硬直した上半身と足を、二人のいかついカナダ人に抱えられ、
「せぇのぉ~」
と、まるで丸太棒を投げるように、天空に放り投げられた。
ギャ~!!!
そのとたん、Iのものすごい悲鳴が渓谷中にこだましたのであった。