カンボジア旅行記(3)退屈な村
オレは、ひなびた村でただ一軒だけの小さな食堂の店先で、グツグツと煮えている怪しげな煮物料理を食べた。
野菜を鶏肉と煮込んだ、お世辞にも美味いとは言えない料理だった。
さて昼メシを食い終わり、通りを反対方向まで戻り、またさっきの僧院をブラブラすると、あとはこの村では特に見るべきものもなくなってしまった。
まだ到着して1時間ほどしか経っていなかったが、オレはシェムリアップの町へ戻ることにした。
今度は、来た道とは反対側の道脇に立ってトラックを待つ。
「来た、来た~っ」
と思い手を上げると、ドライバーが運転席から手を出して「ダメ、ダメ~っ!」のサイン。
なるほどトラックの荷台はすでに人と荷物とが鈴なりにあふれていて、たった一人の客であっても、割り込めるスペースなどまったく無さそうだった。
「オッ、また来たぞ!」
オレは道へ飛び出して手を振ったが、今度も荷台は人の山。
こんなのに乗ったら、走っている途中で確実に振り落とされちゃうぜ・・・
そんなこんなで、通り過ぎるトラックすべてが満員状態なので、オレはすっかり途方にくれてしまった。
すると、先ほどから少し後方に停車していた白い乗用車の運転手らしき男が、突然オレに声をかけてきた。
「5ドルでシェムリアップまでどうだ?」
と言うのだ。
「えっ!兄ちゃんはタクシーなの?」
どう見てもフツーのセダン乗用車にしか見えないじゃあないか。
怪訝に思いつつその男の車をよく見ると、トランクは蓋が閉まらないほど荷物が積まれ、後部座席にはすでに何人もの客らしき人が乗っている様子。
どうやらこれは乗り合いタクシーというやつらしい。
TAXYの文字はどこにもないので、白タクなのか合法なのか、よくわからんが、とりあえず乗り込むことにした。
オレは運転手らしき男によって、その乗用車の助手席に招かれた。
けっこう広々としてクッションがきいている。
トヨタでいえばクラウンサイズだ。
「オッ、冷房もきいてるやんけ!こりゃ快適だぜ~」
オレはわが身の幸運にほくそえんだ。
行きのトラックの荷台は3ドルだった。
あの殺人的な揺れとケツの痛さで3ドル。
それに比べりゃ、このエアコンとクッションのきいた乗用車の助手席がたったの5ドルじゃあ、むしろ安いぐらいだ。
「よぉ~しっ、帰りはこの快適な特等席でのんびりカンボジアの田舎風景を堪能するか・・・」
オレはシートベルトをしめ、深々と助手席のシートに身体を沈めた・・・
しかし、オレの考えはまだまだ甘かった・・・
何と言ってもここはカンボジアだ。
スンナリ行くわけがない。
このあと、さらなるオドロキがオレを待ちうけていた!
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